パソコンのパーツの価格を常にチェックをしているのですが、2017年に高騰していたメモリ価格とストレージ(SSD)の価格が2018年の夏になってから急速に値下がりをしています。
特にメモリ(DRAM)なんかは、2016年の最安値から4倍もの値段に高騰していましたが、ようやく下落傾向になってきました。
出典:価格コム http://kakaku.com/item/K0000799289/pricehistory/
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スマホ拡大とサーバー、仮想通貨の三重苦で値上がり
もともとこうした部材が高騰していた理由として、スマートフォン向けにメモリやストレージが大量に供給されておりパソコン向けの供給が大きく制限されていることが大きな要因と言われていました。特に2016年から2017年にかけて、スマートフォンで使うメモリも2GBだったものが3GB,4GBが当たり前になり、ストレージも低価格モデルでさえ32GB、64GBを搭載するのが当たり前になっていました。
これらの要因に加えて、AWSなどのクラウドサーバー向けの需要も拡大していたことも大きいと言われています。さらにさらに、2017年末ごろは仮想通貨のマイニングのために高性能なマシンが要求されていたこともストレージ価格の上昇に影響を与えていたと言われています。マイニング需要はGPUの逼迫要因となり(構成なグラフィックボードを必要とする)ゲーマーを苦しめたことで有名ですが、SSDも大量に必要としたそうで実はSSD価格にもっとも大きな影響を与えたのはビットコインの価格であるという話もあります。
しかし、スマートフォンのメモリ搭載量の拡大も一部のハイスペックスマートフォンを除けば4GB前後で落ち着きました。仮想通貨の価格は下落したことでマイニング需要も大きく減少し、サーバー需要も一服したとのことで、一旦需要面の拡大は落ち着くと思われます。
供給面もしばらく拡大していなかった
さらにメーカー側の事情も見てみると、現在のメモリの生産量の9割が韓国のサムスン電子とSKハイニックス、米国のマイクロンのたった3社によって生産されているという事情もあります。かつては、もっと多くのメーカーがあったのですが、技術開発と設備投資に多額の資金が必要となる業界のため買収や合併を繰り返し、きづけば3社の寡占状況になっていました。(参考:DRAMメーカーだけが潤う半導体市場は不健全)その結果、近年の価格の大幅な上昇の背景にはこれら3社の大手による談合も行われていたのではないかと噂されており半導体の最大の需要国である中国で調査が入りました。(参考:サムスン・ハイニックス・マイクロン…中国がDRAM価格談合容疑を調査)
さらに技術面でも、メモリ容量の増加(&価格下落)の最大の要因プロセスの微細化の速度が緩んでおり、技術革新そのものも過去と比べると緩やかになっていたという背景もあります。
いずれにせよ半導体業界の需要が爆発している一方で、メーカー側の競争や革新がゆるんでおり価格下落する要因がしばらく見えなかったというのが2018年までの状況でした。しかし、この供給面の事情も2019年ごろには一変すると言われております。それは、これまでメモリなどの半導体の最大の需要国でありながら、そのほぼすべてを輸入していた中国で大規模なファブ(製造工場)が2019年から続々と開業すると言われているのです。まずは、中国国内向けの出荷からだそうですが、需給バランスがグローバル規模で影響することは火を見るより明らかなので、すぐに国内のメモリやストレージ価格に反映されると思われます。(参考:中国のメモリ製造が2019年に本格稼働)
2018年末からメモリとストレージ価格が下落するはず
これらの状況を反映して2018年の5月頃からじわりじわりとメモリとSSDの値段が下がり始めてきており、夏になるとがくんと価格が下落しました。半導体業界は設備投資に数年単位の時間がかかることで、結果として数年単位で好況(価格上昇)と不況(価格下落)を繰り返すといわれていますが、ついに価格下落の時期を迎えたものと思われます。一度値段が下がると一気に(何分の1の値段に)値段が下がるのが特徴なので、2019年に向けてメモリとストレージ価格が大暴落すると私は予想しています。
2018年末から登場する格安スマホの値段に注目だ
スマートフォンの価格に占めるメモリとストレージ価格の比率が上がっていました。例えば、iPhoneの製造原価の推定は288ドルだそうですが、その金額のうち31.2ドルがRAMとROMに使われているようです。(参考:「iPhone 8」のBOMコスト、歴代最高の288ドル )
iPhoneは、スマートフォンのなかでは高級品に属するため筐体やカメラに比較的原価をかけているため低い比率に見えますが、一般的な格安スマホの場合には、メモリとSSDの価格が占める割合はもっと高くなります。
これらの部材の値段が大暴落した場合、今よりも格安スマホが買いやすくなることは間違いないでしょう。特に、中国企業に属するHUAWEIなどは中国で生産されたメモリをいち早く搭載して更に低価格で高性能なモデルを投入してくるかもしれません。P20liteの後継機(P30lite?)や、Zenfone5の後継機(Zenfone6?)の登場と、そのときに発表される価格に今からワクワクが止まりません。
もしかすると、2018年9月に発表されるiPhone9やiPhoneXSの値段も100ドル近く安いものが登場するかもしれませんね。