ソフトバンクが新料金プランを発表しました。2018年9月に新作のiPhoneが発表されることもあり、今回発表される新料金プランが事実上のiPhoneの契約条件となるプランのため、どのような内容になるか注目していました。
他の媒体でもその詳細が発表されていますが、結論から言うと、超超ヘビーユーザーにしかおすすめできないオーバースペックすぎる料金プランとなりました。そして、どうしてそうなってしまったかは最後に考察をしています。
この記事の目次
「ウルトラギガモンスター」がプラスになって拡充
ソフトバンクが、大手キャリアならではの大容量プラン(50GB)としてアピールしていた「ウルトラギガモンスター」が、さらにアップグレードされました。
主要な動画とSNSがカウントフリー対象に!
1つ目のポイントが、ウルトラギガモンスターの50GBの対象に動画サービスとSNSがカウントされない「動画SNS放題」が追加されたことです。
以下の8サービスがカウントフリー対象のサービスとなります。
- YouTube
- Abema
- TVer
- GYAO!
- hulu
- LINE
このラインナップは、まるでBIGLOBEのエンタメフリーとLINEモバイルのコミュニケーションフリーを足して2で割ったような組み合わせです。もちろんこの「動画SNS放題」はありがたいのですが、実際にパケット消費が激しいのは動画サービスが中心であることを考えると、「動画SNS放題」があるならば50GBというのは「多すぎ」ではないかとも思います。全般的に今回の発表を見ると「オーバースペック」なので、もっと制限をつけていいから安くしてくれたほうがありがたい、という印象も受けます。
一般的に「カウントフリー」を導入する際には、動画の画質制限や通信の最適化(画像の劣化)などを組み合わせることが多くなっています。今回の「動画SNS放題」について詳細はまだ判明していませんが、もし動画の画質制限などを行った場合「動画SNS放題」という名の、事実上の速度制限という罠である可能性も否定出来ないため手放しで喜ぶことはまだできません。50GBものギガ(パケット)が余っているにもかかわらず、悪い画質でYouTubeを見なければならない・・・なんてことにならないことを願います。
通話し放題が不要な人のための「従量制」を選べるように(最大500円DOWN!)
従来のウルトラギガモンスターは、通話については「かけ放題」か「5分かけ放題」かしか選ぶことができませんでした。そのため、全く電話は使わない(LINEなどで十分)、電話は着信だけできればよい、という人にとっては通話定額分がもったいない(いらない)プランとなっていました。
この通話プラン部分が改定され、これまで存在しなかった無料通話が全く含まれない「通話基本プラン」のみで契約することができるようになりました。
実際には通話基本プラン(1,500円/月:2年契約の場合)を契約し、そこに「準定額オプション(500円/月)」か「定額オプション(1,500円/月)」かを選ぶ形式になります。
そのため、
- 従量制 1,500円
- 5分定額 2,000円
- 無制限定額 3,000円
というのが通話部分のプランとなります。この金額にパケットプランを追加したものからさまざまな割引が提供されていくとはいえ、キャンペーンを全て省いたときの「定価」としては格安SIMと比べるとかなり割高に感じます。
通話料金部分の改定は喜ばしいことですが、これも「店頭でのキャンペーン」適用の条件として実質的に5分定額オプションが強制されるかもしれないので、実際に店頭でどのようなキャンペーン・加入条件となるかがわかるまでは評価しづらいです。
4人以上+光回線で「初年度3,480円~」使える
「ギガモンスター+」のデータ使用料金は5,980円になります。ここに通話基本料金1,500円を加えた金額が定価となります。ここから大手キャリアならではの「ややこしい割引方法」を適用すると、最安で3,480円~使うことができます。
この金額にするための条件としては、
- 家族(遠方に暮らす家族でもOK)4人以上で契約すること
- ソフトバンク系の光回線を契約すること(ソフトバンク光など)
- 1年目だけ1,000円割引
という3つの条件を満たす必要があります。家族みんなでソフトバンクを使う、家の回線もソフトバンク光にまとめる!という方にとっては、確かに安くすることができます。一方で「ウルトラギガモンスター+」の本来の強みである50GBを使いきるためには、家に光回線はいらないという人も多いと思いますので、そういう点では、やはり「オーバースペック」「やりすぎ」なプランかと思います。
さらなる「やりすぎ」4月まではデータ無制限
なお、2019年の4月までは上述の50GBという制限もなく、データ完全無制限になるとのことです。ここまでくると、もはや固定回線を解約して常にテザリングしてネットサーフィンをしたくなるところですが、固定回線を解約すると「おうち割光セット」の1,000円引きが効かなくなるので、家族4人で契約している場合なら4,000円値上がってしまい、もはや固定回線を契約したほうが安くなるという、うまいこと隙間を突いたキャンペーンに思います。
そして、ソフトバンクをはじめとした大手キャリア各社は、過去に通信の公平性の名のもとに「無制限といいながら、実際に大量に通信したら速度制限をかける」ということをあの手この手で何度も実施しているので、どうせ今回もまた・・・と思ってしまうところが悲しいです。
毎日10GB×30日とか使っても本当に大丈夫なのでしょうか?そうであれば、モバイルルーターにSIMを差し替えて完全無制限モバイルルーターとして使いたいですが。IMEI制限とかかけてくるのでしょうね、きっと。
なおスマートフォンでテザリングするには、しれっと500円の追加オプション料金が必要となるので注意しましょう。
家族割が「1GB弱のライトユーザー」でも組めるように
今回の発表における、もう一つの大きな特徴は、これまで「ウルトラギガモンスター」をお得に使うためには、家族全員で「ウルトラギガモンスター」を組む必要がありました。ウルトラギガモンスターは50GBを前提としているプランだったために、家族全員がヘビーユーザーであればお得ではあったのですが、スマートフォンは電話とメール、SNSくらいという家族にとっては無駄が多いのも事実でした。
そういう家族のために、「1GB~」の従量制のパケットプランである「ミニモンスター」が新設され、このプラントも家族割を組むことができるようになりました。これによって、ヘビーユーザーではない家族とまるごと家族割を組むことで50GBまで使い放題の「ウルトラギガモンスター」を安く使えるようになります。
2GB以上使うと逆に損なプラン…
と思って、よくよく「ミニモンスター」のプランを見てみると、ウルトラギガモンスターの家族割&光セット割を組んだときの最安値である「3,980円~」を下回るのは、「0~1GB」しか使わなかったときに限られることがわかります。すなわち、2~5GBと普通にスマートフォンを使う人だと逆に高くなるのです。
auの「ピタットプラン」と「フラットプラン」の料金体系などを見ると、従量制の料金プランが定額大容量の料金プランを上回るボーダーは、5GB前後に設定するのが良心的というか当たり前だと思うのですが、1GBを超えた時点で定額制を超えてくるというのは、露骨ですね・・・
「動画SNS放題」はミニモンスターでは対象外
ウルトラギガモンスター+に付与される「動画SNS放題」は、残念ながらミニモンスターでは対象外となります。1GBまでに抑えたいというときにこそ、動画SNS放題が効いてくると思うので+500円などの追加オプションでもいいから対応してくれれば良かったのに、と思わざるを得ません。
今回の「ミニモンスター」によって得になる家族というのは、まったくスマホを使わない人(ミニモンスター)と、がっつりスマホを使う人(ウルトラギガモンスター)にとってお得だという、かなりトリッキーな組み合わせとなります。それぞれの人に「ぴったりと合ったプラン」は選ばせてくれないという意思を感じてしまいます。
アメリカ流の「Unlimited」プランを逆輸入した格好
今回のプランを見ると、実はアメリカで発表されているT-mobileやSprintの「Unlimited」プランに非常に中身が似ていることがわかります。
T-mobileとSprintは、無制限のデータ通信(といいながらテザリングなどで大量に通信したら速度制限はかかる)プランを発表しており、それぞれNetflixとHuluの動画配信サービスが無料+それらのサービスに関するデータ通信はカウントフリーで提供しています。これは、(通信の中身を差別しないという)インターネット中立性原則に反するのではないかと言われて議論を巻き起こしていましたが、ついに日本の大手キャリアからも、特定のサービスの通信だけを優遇するカウントフリーを実施するところがあらわれたことになります。
米Sprintに投資していたソフトバンクの視点としては、アメリカのプランを日本に逆輸入した、ということなのかもしれません。
最近ではその米国でもUnlimitedプランが維持できなくなりつつあり、実質的な料金値上げとサービス範囲の縮小が起きているのですが、ソフトバンクはあえて逆行していますが大丈夫なのでしょうか。
NETFLIXに振られたソフトバンクは、Huluと関係を深める
今回の「動画SNS放題」の中身を見ると、NetflixではなくHuluが対象となっているのも興味深いポイントです。かつて、ソフトバンクはNetflixの店頭販売権の国内独占販売権をもつなどして関係を深めていましたが、2018年になってauがNetflixと手を組むことを発表し急に関係が悪化しています。
子会社のSprintと同様に、親会社のソフトバンクもまたHuluと関係を深めているというのは興味深いところです。日本のHuluは現在日本テレビの完全子会社のため米Huluとは資本関係は無いはずですが、Netflixをライバルに取られてしまったらHuluくらいしか残っていないのでしょう。郡戦略でNo.1しか相手にしないと嘯くソフトバンクにしては、二番手以下の動画配信サービスと手を組まざるを得ないのは臍を噛む気持ちなのではないでしょうか。
Huluの基本料をセットにしたプランもしくは、本家Sprintと同様に無料でHulu利用権がついてきたらいいのに。いずれ出るかもしれないですね。
しれっと発表した大改悪「分離プラン」とは
(auの資料)
今回の新プランの大改悪部分は、実は上に書いた特徴ではないところにしれっと現れていました。それは、ソフトバンクの記者会見の質疑応答で突然に明らかにされた、今回のプランは「分離プラン」だということです。
分離プランとは何かというと、端末の分割払いの際に「毎月割」「月々サポート」のような端末購入と紐付いた割引施策がつかない料金プランのことをさします。すなわち、端末代はこれまでのように「実質1万円」といった金額にならず、月々の料金とは別に「きっちり10万円」という金額になるということです。
従来のギガモンスターでは、月々サポートが付与されたため、今回とほぼ同等の月額料金でありながら「月々サポート」がついたため、新型iPhoneの「実質的な購入金額」を1万円前後でおさえることができていました。この大きな差は、当然今回クローズアップされることなく、しれっと発表を終えてしまいました。
確かに通信業界を監督する総務省が「月々の携帯電話料金」と「端末代」をわけて(月々サポートなどのわかりにくい抱き合せを廃止する)請求する「分離プラン」を強く要望していたのは事実です。一見、今回の発表は総務省のこの指導に従った形ではありますが、それは本来「月々の基本料金を下げる」ことも同時に要望されていたはずです。auの「ピタットプラン」「フラットプラン」やdocomoの「docomo with」などは、この指導に従って「月々の使用料金を安く+端末代は定価の分割で」という料金プランになっていたのですが、今回発表したソフトバンクは「料金を下げることをせずに、データ通信量をオーバースペックなくらいに増やすことでごまかした」印象を受けます。
ここはソフトバンクがずるい、というのもありますが、最近の総務省および官邸の通信料金に対する政治的介入のせいでかえってトータルの通信料金が高くなっているのが本当にひどいところです。
結論:超超ヘビーユーザーにとってのみ福音となる新料金プラン
結論としては、今回のソフトバンクの新プラン「ウルトラギガモンスター+」は、従来データ通信の公平性を脅かすとして嫌悪していたはずの「月間100GB以上も使ってしまうような超超ヘビーユーザー」にのみ利するプランだといえます。(そして、実際にこれだけ通信したときに速度規制をしないかは改めて注視したいポイントです)
格安SIM(Y!mobile)はライトユーザーにまかせ、大手キャリアはヘビーユーザーをターゲットにしていくという経営戦略なのでしょうが、あまりにも手のひらを返しすぎていないでしょうか。